金融庁が生保に怒りの鉄槌!節税・外貨建て保険に「是正指導」

 生命保険業界の節税・外貨建て保険販売に対してついに金融庁が怒りの鉄槌を振り下ろし、「可及的速やかに見直してほしい」と是正指導を始めたようです。
 金融庁が目下、生命保険各社に“是正”を迫っている項目は大きく2つあり、1つ目は中小企業の経営者を主な対象にした節税保険(法人向け定期保険)で、2つ目はドル建ての一時払い終身などの外貨建ての貯蓄性保険について是正を求めているそうです。
 まずは節税保険に対しては、昨年4月に生保業界のガリバー日本生命保険が「プラチナフェニックス」の愛称で商品を投入して以降、タガが外れたかのごとく多くの生保がこぞって追随し、販売競争に明け暮れている事に対して節税保険は保険本来の機能である保障はさておき、保険料全額を損金算入できるために法人課税の節税につながることが最大のウリとなっていることについて、それを前面に押し出した販売手法が目立つ現状を踏まえて金融庁は今年6月に実態調査に着手そうです。


金融庁が生保に怒りの鉄槌!節税・外貨建て保険に「是正指導」
( 週刊ダイヤモンド編集部 2018.12.3 中村正毅 )
金融庁が生保に迫る2つの是正
 ついに、金融庁が怒りの鉄槌を振り下ろした──。
「可及的速やかに見直してほしい」
 金融庁が目下、生命保険各社に“是正”を迫っている項目は、大きく2つ。
1つ目は、中小企業の経営者を主な対象にした節税保険(法人向け定期保険)で、2つ目は、ドル建ての一時払い終身などの外貨建ての貯蓄性保険だ。


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金融庁が生保の食い扶持になっている節税保険と外貨建て保険にとうとうメスを入れた Photo by Masaki Nakamura

 まずは、節税保険。昨年4月に生保業界のガリバー、日本生命保険が「プラチナフェニックス」の愛称で商品を投入して以降、タガが外れたかのごとく多くの生保がこぞって追随し、販売競争に明け暮れている。
 この節税保険は、保険本来の機能である保障はさておき、保険料全額を損金算入できるため、法人課税の節税につながることが最大のウリだ。
それを前面に押し出した販売手法が目立つ現状を踏まえ、金融庁は今年6月に実態調査に着手。
夏場以降、個別に各社を呼び出しては、販売実態などについてヒアリングを続けてきた。
 金融庁が適正化に向けて目をつけたのが、節税保険の「付加保険料」だ。
付加保険料とは、販売や契約の維持・管理に必要なコストとして生保が独自に上乗せする保険料のことで、実は、商品審査における認可事項の“対象外”になっている。

 そこで多くの生保は、認可外である上、金融庁の監視の目が届きにくいことをこれ幸いに、付加保険料(予定維持費など)を契約期間の後半に厚めに乗せるといった、 “過度の調整”を行ってきた。
そのぶん、契約期間前半の解約返戻金の返戻率が高くなるという仕組みだ。
 だが、ヒアリングを通じて「合理性、妥当性を欠く」(金融庁職員)付加保険料の事例がつまびらかとなり、11月中旬以降、生保10社超を呼び出して適正化を強く迫っているというわけだ。
 一方で、金融庁が適正化の圧力を強め、多くの生保が早期に販売を取り止めざるを得なくなった場合は、付加保険料の過度の調整をしていない日生など一部の生保のみが、年度末の需要期に大手を振って販売できるという状況をつくってしまうことになる。
そのため、「特定の会社だけを利するような見直し策を、行政が進めるのはいかがなものか」という怨嗟の声が一部の生保から上がっている。だが、金融庁は耳を貸す素振りすら見せない。
 むしろ、1日でも早く販売競争に参戦したいがために、付加保険料に傾斜をかけるという「安易」(金融庁幹部)な商品設計で認可をとり、結果的に適正化を迫られるようなスキをつくってしまった浅はかさについて、自ら顧みるべきというスタンスにみえる。


生保が動揺する「実質利回り」
 その節税保険よりも、足元で生保各社に動揺が広がっているのが、外貨建て保険だ。
「募集補助資料の中で、実質的な利回りをわかりやすく提示し、顧客への情報提供を充実させるといった方向性も考えられるのではないか」
 12月3日、金融庁幹部は居並ぶ生保の役員たちにそう問いかけてみせた。
発言自体は監督当局による提案のようにも聞こえるが、実態は「言った通りに見直せ」という“指導”にほかならない。
 そもそも金融庁は、今年9月に公表した行政方針の中で、投資信託などと比べて貯蓄性保険(外貨建て保険など)は、運用コストや実質的な利回りが分かりにくいと指摘している。
 さらに、パンフレットなどに載せている積立利率(手数料など生保側の契約の初期費用を差し引いた積立金の保証利回り)が、あたかも実質的な利回りであるかのように“優良誤認”させかねないケースがあるとして、改善の必要性を訴えていた。
折しも、12月に生保の業界団体による販売指針の改定が控えていることもあって、金融庁としては当然、実質利回りの表示が新たな指針に明記されるだろうと期待を寄せていたもようだ。
 ところが、業界団体が出してきた指針の改定案は、積立利率は「実質的な利回りとは異なります」と補足で表記するという、何とも姑息な手段だった。


金融庁の憤りは爆発寸前
 これが、金融庁の怒りの導火線に火をつけた。
当初予定になかった生保役員たちとの会合を急きょセットし、金融庁幹部が問題意識と改善に向けた考え方について、改めて説明する事態に相成ったというわけだ。
先の金融庁幹部の問いかけが、そうした経緯から発せられていることからも、言葉の裏にある見直しの圧力がいかに強いかが伝わってくる。
 この実質利回りの表示による販売への影響は決して小さくない。
 銀行窓口などで投信などと比較した際に、投信と同じようなリスク性商品であるにもかかわらず、外貨建て保険は生保側のさまざまなコストが差し引かれるため、実質利回りが多くのケースで見劣りしていることが一目瞭然となるからだ。
 生保にとっては、回復基調にあった外貨建て保険の銀行窓販に冷や水を浴びせる事態にもなり兼ねず、後ろ向きな姿勢になってしまったのだろう。
 一方で、金融庁からすれば「顧客本位の業務運営(FD)」を掲げる中で、実質利回りの表示といった情報提供の充実は、「FDの一丁目一番地」(金融庁首脳)に当たる項目だ。
 そうしたFDど真ん中ともいえる項目においても、業界の論理を持ち込んで抗戦してみせ、片や節税保険では認可の抜け穴をつくようなかたちで商品開発を行い、売り止めになるまで駆け込み販売にいそしむ――。
 一見すると、監督当局と生保による「予定調和」的な対立の構図に映るかもしれないが、今や金融庁の生保に対する憤りと嫌悪感は、爆発寸前だ。
そのことに、生保各社は未だ気づいていない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)

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